混合型IBS?薬の副作用?

過敏性腸症候群(IBS)の混合型を診断する

過敏性腸症候群(IBS)には次の4つの型が存在しています。

①下痢型

②便秘型

③混合型

➃分類不能型

また、一人の人が一つの型しか発症しないわけではなく、いつの間にか別の型に移行していることがあることも報告されています[1]。

このため、内服の処方は時間経過によって変わっていく、もしくは変えていく必要がでてくることもあります。

というのも、全例ではありませんが、下痢症状を改善する薬というのは、場合によっては便秘を起こすこともあり、逆に便秘に対する緩下剤は下痢を起こす可能性もあるからです。

とくに、過敏性腸症候群(IBS)の型がはっきり分からないまま投薬が始まったときや、途中で型が変わってきたときに薬剤の副作用で混合型のように見えてしまう場合もあるので注意が必要です。   

何となく想像できるかと思いますが、便秘型が徐々に下痢型に変化した場合に緩下剤を使っている場合や、下痢型が便秘型に変化した場合にも下痢止めなどを同じように使っていると下痢や便秘が起きやすくなってきます。

これを混合型の過敏性腸症候群(IBS)と診断してしまうことが、臨床の場面では時々起きることがあります。

過敏性腸症候群(IBS)において型の診断が大切なのは、型によって投薬が異なってくることがあるからです。

    

投薬がない状態での排便周期をご本人が自覚されていれば比較的診断はしやすいのですが、薬剤の副作用なのか混合型なのかはなかなか難しいケースも少なくありません。

過敏性腸症候群(IBS)は診断自体が半年以上続く症状というのが前提ですので、可能であれば投薬を始める前に2週間程度排便日記などを付けられると理想的なのですが、過敏性腸症候群(IBS)の診断がなされる頃には、症状に応じて何らかの投薬がなされていることも少なくありません。

このため、混合型の過敏性腸症候群(IBS)の型を決める時には薬剤の内服歴なども詳細に確認する必要があります。

もし、投薬されている病院と別の病院を受診される場合はこれまでの内服歴が分かるようにお薬手帳をぜひ持参してください。

混合型の過敏性腸症候群(IBS)の治療にあたって

『下痢が出きってしまうと便秘となり、段々しんどくなってくる。最終的に栓のようになっていた固い便が出ると途端にまた下痢が始まる。こんな繰り返し。』

混合型の過敏性腸症候群(IBS)を説明していただくと、このような表現を聞くことが多いように感じています。

実は処方に関しては混合型の方の方が、便秘型や下痢型のそれぞれの典型例より(個人的には)悩みます。

先に述べたように、それぞれの型にあわせた内服を処方すると、下痢は止まったけれど便秘の周期も内服を続けて酷い便秘になってしまうなども起きる可能性があるからです。

    

このため、混合型が疑われる場合はどちらの症状がより困っているのか、どちらの症状になることを恐れているのかなどを問診していく形となります。

混合型の方の場合、便秘の際の痛みの方が下痢より不安だという方も少なくない印象を受けていますので、問診は処方における非常に大切な指標となります。

便秘時には便秘型用の内服、下痢時には下痢型用の内服を処方することができればよいのかもしれませんが、なかなか周期が一定しないことも少なくありません。

文献などでも混合型に対する処方に関してはあまり明記された処方法を見つけることができませんでした。

逆に、生活習慣(睡眠など)の改善や整腸剤(プロバイオティクス)、食生活(低FODMAP食など)に関しては型を問わないため、薬の調整が難しい場合はこういった非薬物治療でもできることがないかを探してみるのも一つかもしれません。

      

結局のところ、過敏性腸症候群(IBS)は自覚症状が治療標的であるため、客観的にみてわかりやすい便回数や症状に加え、本人にとっての快適な状態を手探りで見つけていく必要があります。

自分でも規定容量内で微調整していただけるようにあらかじめ中止基準や頓服についても主治医の先生や薬剤師の先生とあらかじめ相談しておくことで、より自分に合ったセミオーダーメイドの治療ができるようになるかもしれません。

ただし、血中濃度などで効果を発揮する薬剤もありますので、原則的に最初は添付文書の容量、服用のタイミングを説明した上で、それが上手くいかない場合に自己調整していただくことをお勧めします。

また、過敏性腸症候群(IBS)はプラセボ効果*も比較的大きな治療効果を発揮しますので、自己調整できることでこういった効果もねらうことができるかもしれません。

  

もし、自分が過敏性腸症候群(IBS)の混合型かもしれないと思われる場合現在の内服やその飲み方について一度主治医の先生と相談してみてください。

まだ、病院を受診していないけれどこれから受診を希望される方は、可能であれば1-2週間排便習慣の日記をつけてからいかれるとより良いかもしれません。


プラセボ効果*

効果のない偽薬などを効果のある薬として投与すると、心理効果(効果がでるだろうという思いや安心感)により症状を軽減する効果がみとめられる状態を指します。


引用文献

SMITA L. S. HALDER et al.; Natural History of Functional Gastrointestinal Disorders: A 12-year Longitudinal Population-Based Study: Gastroenterology. 2007 Sep;133(3):799-807. doi: 10.1053/j.gastro.2007.06.010. Epub 2007 Jun 20.

素材

写真 写真AC クリエイター: acworksさん

写真 写真AC クリエイター: Hadesさん




過敏性腸症候群すっきりプロジェクト

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