過敏性腸症候群の治療④:事務局便り#11

  1. 睡眠障害とは
  2. 睡眠と過敏性腸症候群
  3. 運動および飲酒、喫煙の関係   

*動画とブログの中身は同じです。

本日の内容は、過敏性腸症候群の治療についての続きです。

最初に、睡眠障害について簡単に説明します。

それから、睡眠と過敏性腸症候群について簡単に説明し、最後に、運動および飲酒と喫煙との関係についてもガイドラインに沿って説明したいと思います。

睡眠障害の診断にはいくつかの項目があります(※1)。

寝つきが悪くて眠れない「入眠困難」や、夜中に何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」、早朝に目が覚めてしまい再び眠れない「早朝覚醒」などが主な症状です。

これらの症状が頻繁に起こり、日中にも眠気などの問題がある場合、睡眠障害と診断されます。

 ただし、極端な早寝・早起きや遅寝・遅起き、時差ぼけなどの概日リズム睡眠・覚醒障害は、睡眠障害には含まれていません。

睡眠障害が原因で過敏性腸症候群が発症するリスクが高まることが知られています(※2)。

特に女性では、睡眠不足が次の日の胃腸の調子を悪くすることも報告されています(※3)。

2024年現在、睡眠を改善することで過敏性腸症候群が治るという科学的根拠はありません。

しかし、睡眠障害でお腹の症状が悪化する可能性があるので、自分の体調と生活習慣を見直すことは大切です。

睡眠のほか、運動や飲酒、喫煙などの生活習慣と過敏性腸症候群の関係も注目されています。

インストラクターによる指導を受けた適度な運動は過敏性腸症候群の重症度を改善することが報告されています(※4)。

また、ヨガやウォーキング、エアロビクスなども効果があるとされています(※5)。

一方で、アルコールの多量の摂取が下痢と関連することは報告されていますが、禁煙や禁酒が過敏性腸症候群の症状改善につながるかはまだわかっていません。

運動療法は、過敏性腸症候群の症状を改善することが期待されますが、全ての人に効果があるわけではありません。

また、睡眠や、禁酒・禁煙といった生活習慣の改善も効果がないというわけではなく、充分な証拠が得られていないだけの可能性もあります。

 

次回は、一旦治療については休憩とし、問い合わせの多いガス症状について説明します。


イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストを使って菊池が作成

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集英社プラス-知の水先案内人で【脳腸相関】を連載中です。特に第10回および第11回は過敏性腸症候群についてです。

※1 Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders-5(DSM-5:精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)

※2 Creed F. Review article: the incidence and risk factors for irritable bowel syndrome in population-based studies. Aliment Pharmacol Ther. 2019 Sep;50(5):507-516. doi: 10.1111/apt.15396. Epub 2019 Jul 17. PMID: 31313850.

※3 Jarrett M, Heitkemper M, Cain KC, Burr RL, Hertig V. Sleep disturbance influences gastrointestinal symptoms in women with irritable bowel syndrome. Dig Dis Sci. 2000 May;45(5):952-9. doi: 10.1023/a:1005581226265. PMID: 10795760.

※4 Johannesson E, Simrén M, Strid H, Bajor A, Sadik R. Physical activity improves symptoms in irritable bowel syndrome: a randomized controlled trial. Am J Gastroenterol. 2011 May;106(5):915-22. doi: 10.1038/ajg.2010.480. Epub 2011 Jan 4. PMID: 21206488.

※5 Zhou C, Zhao E, Li Y, Jia Y, Li F. Exercise therapy of patients with irritable bowel syndrome: A systematic review of randomized controlled trials. Neurogastroenterol Motil. 2019 Feb;31(2):e13461. doi: 10.1111/nmo.13461. Epub 2018 Sep 19. PMID: 30232834.

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