- 消化管でみられるガス症状
- おなかの張り感を起す消化器疾患
- 過敏性腸症候群の定義と「ガス型」
*動画とブログの中身は同じです。
本日の内容は、過敏性腸症候群のガス症状についてです。
最初に、消化管で見られるガス症状について簡単に説明します。
それから、おなかの張り感を起す消化管の病気について説明し、最後に、過敏性腸症候群の定義と「ガス型」の過敏性腸症候群に少し触れたいと思います。
胃腸に関する問題として、よくあるガスの症状には、げっぷ、おなかの張り、おなかの音(腹鳴:ふくめい)、腹痛、おならが多いことなどがあります。
胃や腸の中には、口から飲み込んだ空気や、腸の中の細菌が作るガスが常に存在しています。
このため、先ほどのような症状が出ることは不思議ではありません。
過敏性腸症候群でも、症状の重症度を評価するときに、腹痛だけでなく、おなかの張りやそれによる不快感も重要なポイントとされています。
おなかの張り感を引き起こす可能性がある胃腸の病気は、過敏性腸症候群や、以前説明した機能性ディスペプシア以外にもたくさんあります。
たとえば、
・空気を飲み込みすぎる呑気症(どんきしょう)
・便秘
・腸が動かなくなるイレウスや偽性腸閉塞(ぎせいちょうへいそく)
・腸の壁に空気が入り込む腸管気腫症(ちょうかんきしゅしょう)
・腸管が大きく膨らみ正常に動かなくなる巨大結腸症(きょだいけっちょうしょう)
・大腸がん
・大腸の一部がねじれるS状結腸捻転(ねんてん)、
・腸が腸に入り込んでしまう腸重積(ちょうじゅうせき)
などです。
これ以外にも、腸内細菌、薬剤、食事、睡眠、運動といった生活習慣、糖尿病などの内分泌疾患、脳梗塞やパーキンソン病などの神経疾患、うつ病などの精神疾患も胃腸のガス症状に関係することが報告されています。
ちなみに、これらの病気を覚える必要はまったくありません。
ここで覚えておいてほしいのは、お腹のガス症状だけで病気を診断するのはとても難しいということです。
ここで、過敏性腸症候群の診断基準を簡単に復習しましょう。
過敏性腸症候群の診断には、ほかの消化器の病気がなく、最近3ヶ月の間に、平均して週に1回以上の腹痛があり、便の異常も関係していることが必要です。
言い換えると、ガスに関連した症状があっても、腹痛や便の異常がない場合は、過敏性腸症候群とは診断されません。
それでは、今回のプロジェクトでも多くの相談が寄せられている、「おなら」や「お腹が鳴る」などが主な症状の、「ガス型」過敏性腸症候群という診断はどこからきているのでしょうか?
調べてみると、2015年に発表された小児の心身症としての過敏性腸症候群の分類には「ガス型」があり、おならや腹鳴などに対する恐怖、苦悩で便があまり問題にされないと書かれていました(※1, 2)。
次回はこれについて、もう少し触れたいと思います。
イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストを使って菊池が作成
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集英社プラス-知の水先案内人で【脳腸相関】を連載中です。特に第10回および第11回は過敏性腸症候群についてです。
※1 土生川千珠,村上佳津美,竹中義人他(2015):くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン 腹痛編.子どもの心とからだ,23, 488-502.
※2 村上佳津美:小児心身症としての過敏性腸症候群.児童青年精神医学とその近接領域.Vol. 58, No.1.S7-4
過敏性腸症候群すっきりプロジェクト
過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト
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