- 小児の過敏性腸症候群の定義
- ガス症状の問題点
- ガス失禁(意図せず起こるおなら)
*動画とブログの中身は同じです。
本日の内容は、過敏性腸症候群のガス症状の続きです。
最初に、小児の過敏性腸症候群の定義と、前回説明した「ガス型」の違いについて簡単に説明します。
それから、ガス症状の問題点と、ガス失禁、つまり、意図せず起こるおならの症状について説明したいと思います。
前回お示しした、2015年に出された「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」には、小児の過敏性腸症候群として「ガス型」も記載されています(※1)。
一方で、2024年現在、国際的な診断基準のローマフォーは図の通りで、日本小児心身医学会のホームページで確認できる、小児の過敏性腸症候群の診断基準もほぼ同じ形になっています(※2)。
つまり、便の異常がない場合に過敏性腸症候群と診断することはすこし難しそうです。
ただし、日本小児心身医学会のホームページには「腹痛、便秘、下痢または腹鳴や放屁など優位な症状により病型が分けられることもありますが、確定されたものではなく変動します」と書かれており、小児での診断の難しさが伺えます。
「ガス症状」の問題点は何でしょうか?
それは「くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン」の定義そのものだと思います。
つまり、おならや腹鳴、腹部膨満感などガス症状に対する恐怖・苦悩が強いことです。
静かな教室や決められた席で授業を受けることが多い、小学生から高校生でこれらの症状が、非常につらいことは容易に想像できます。
また、この症状が大人になっても続けば、当然仕事にも影響するでしょう。
では、結局、この症状に対して何科を受診するべきなのでしょうか?
そのヒントの一つが便失禁ガイドライン(※3)にありました。
このガイドラインでは「無意識または自分の意思に反して、肛門からガスが漏れる症状」として、ガス失禁が定義されています。
ガス失禁は症状なので、病名ではありませんが、無意識または自分の意思に反して便が漏れてしまう便失禁と合わせて、肛門失禁ともよばれています。
肛門失禁が起こる原因はさまざまですが、過敏性腸症候群も原因の一つとして挙げられており、やはり過敏性腸症候群の症状の一部としてガス失禁がでる可能性はありそうです。
ただし、糖尿病などの内科の病気や出産や手術による神経障害に伴って肛門の知覚が鈍くなる、知覚鈍麻も肛門失禁の原因として挙げられています。
症状は同じでも、知覚過敏と、知覚鈍麻では原因も治療法も違ってきます。
小児では知覚鈍麻は少ないかもしれませんが、日本人の肛門失禁の有症率は 34.4%と考えると、無視できない数です。
また、「ガス型」には強い不安や、抑うつ症状も伴うことが多いため、精神面での鑑別もやはり欠かすことはできません。
次回は、ガス症状に伴う原因の鑑別と、かかるべき診療科についてもう少し考えたいと思います。
イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストを使って菊池が作成
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集英社プラス-知の水先案内人で【脳腸相関】の連載をしています。第10回および第11回が、過敏性腸症候群についてです。
※1 土生川千珠,村上佳津美,竹中義人他(2015):くり返す子どもの痛みの理解と対応ガイドライン 腹痛編.子どもの心とからだ,23, 488-502.
※3 便失禁診療ガイドライン 2024 年版(改訂第 2 版)日本大腸肛門病学会:https://www.coloproctology.gr.jp/uploads/files/about/jscp_benshikkinguideline_kaiteian.pdf
過敏性腸症候群すっきりプロジェクト
過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト
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