過敏性腸症候群の腸管運動とガス症状:事務局便り#15

  1. 腸管の構造と3種類の腸管運動
  2. 腸管の運動と腹鳴(ふくめい)

*動画とブログの中身は同じです。

本日の内容は、過敏性腸症候群における腸管運動と腸管ガスについてです。

長くなるので2回に分けます。

本日は最初に、腸管の構造と消化に関わる3種類の腸管運動について簡単に説明します。

それから、腸管運動に関連したお腹の音についても簡単に触れたいと思います。

腸管の動きには、蠕動(ぜんどう)運動、分節(ぶんせつ)運動、振子(ふりこ)運動の3つがあります(※1)。

これらはそれぞれ、特定の役割を果たしています。

腸管には、腸管に対して縦に走る縦走筋と、輪のように腸管を囲む内輪筋という2つの筋肉があり、筋層間神経叢と粘膜下神経叢という2つの神経叢もあります。

神経叢とは草むらのように複数の神経が組み合わさったものを指します。

これらの動きは副交感神経や交感神経といった自律神経や、第二の脳とも呼ばれる腸管神経叢によってコントロールされています。

蠕動(ぜんどう)運動:

蠕動運動は、腸管の食べ物や薬を押し出して進めるための動きです。

腸管の縦走筋と輪状筋の2つの筋肉が交互に強く縮んだり緩んだりすることで、腸の中にくびれができます。

このくびれが順番に動いて、内容物を胃から大腸へと押し出していきます。

例えば、歯磨き粉のチューブを押すと中身が出てくる様子を思い浮かべると分かりやすいでしょう。

食べ物などが胃に入るとすぐに蠕動運動が始まり、食べた物の種類や量にもよりますが、大体3時間ぐらい続きます。

 

分節(ぶんせつ)運動:

次は分節運動についてです。

分節運動とは、内輪筋が一定の間隔で縮んだり、緩んだりする動きのことです。

腸管の一部が細くなったり、膨らんだりして、いくつかの節に分かれているように見えるので、「分節」と呼ばれます。

分節運動では、この縮んだり、膨らんだりする場所が少しずつ変わります。

この動きによって、食べ物や薬が細かく砕かれて消化液とよく混ざり、体に吸収されやすい状態になります。

この運動は、主に食べ物が胃から小腸に移動してきたタイミングで始まります。

 

振子(ふりこ)運動:

最後に、振子運動について説明します。

振子運動とは、縦走筋が一定のリズムで縮んだり緩んだりする動きのことです。

この動きによって、腸管の中の食べ物や薬などが混ざり合いながら、少しずつ肛門の方向に移動します。

この運動は特にお腹が空いているときに起こりやすいとされます。

分節運動と振子運動の正確な役割の違いは、まだ完全には分かっていませんが、どちらも腸管の内容物をうまく消化して吸収するために重要な動きです。

腸管は、蠕動運動、分節運動、振子運動を使って食べ物や薬を分解しながら消化液と混ぜ、肛門へ移動させます。

これらの腸管の動きによって、お腹の音が出ることがあります。

ペットボトルに例えると、中身が詰まった状態よりも、一部が空気に置き換わった方が音が大きくなるのと同じことが起きています。

つまり、満腹のときより、多少お腹が空いた時のほうが、おなかの音がなりやすくなります。

しかし、常に満腹でいればお腹の音が気にならないかというと、実はそう簡単ではありません。

とくに過敏性腸症候群の場合、空腹時に腸の動きが少なくなるとガスがたまりやすくなることが知られています(※2)。

次回、これについてもう少し詳しく説明します。



イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストもしくはそのイラストを使って菊池が作成

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集英社新書プラス-知の水先案内人で【脳腸相関】の連載をしています。第1-2回が本日の内容をより詳しく説明しています。なお、第10回および第11回が、過敏性腸症候群についてです。

※1 柳谷 岩雄 腸管運動の生理:日獣会誌12(35):1959

※2 福土 審 運動機能からのアプローチー小腸運動の生理と病態-日本内科学会誌第100巻・1号・139-149 


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