過敏性腸症候群(IBS)症状がなかなか改善しない場合に出てくる不安にはいくつかの種類があるように感じられます。
とくに治療の中でも最後まで患者、医療者の双方に残るのが他の病気への不安です。
IBSのもっとも世界的に有名な診断基準はRome Ⅳ(ローマ4)で定められており、
6カ月以上症状が続いており、「最近3ヶ月の内、平均して1週間に少なくとも1日以上、繰り返しの腹痛が存在すること」に加え、
- 排便と関連している
- 便の頻度の変化をともなう
- 便形状(便の見た目)の変化をともなう
の3項目のうち、2項目を満たせば診断されます。
しかし、これに当てはまる=IBSと診断できるわけではありません。
実はその前提条件として他の病気が否定されていること、とされています。
この「他の病気が否定されていること」というのが厄介で、「○○である」ということより「▼▼ではない」というほうがずっと難しいのです。
医療の世界では「後から診察する方が名医」という言葉もあるぐらい、早期診断というのはとりわけ難しいと言われています。
その中でも採血や画像所見も異常がないことを確認する必要がある機能性消化管疾患の早期診断は非常に難しいと感じます。
6カ月以上症状が続いておりというのが診断基準に入っているのはこの辺りの兼ね合いもあるのかもしれません。
また、外来でIBSはあるけれど糖尿病などに伴う自律神経障害などによる下痢や便秘といった状態が混じっていることがあります。
どんな状況や場面で腹部症状が出やすいのかについて詳しく問診していき、過敏性腸症候群(IBS)のRome基準を満たさない場合や平日、休日で症状に差が出ない場合、薬の効き方など「典型的な過敏性腸症候群ではない」と感じる場合に他の病歴の長さなどを考慮して判断します。
これでも判断がつかなければ肛門括約筋を締める力の程度や、知覚過敏について検査していく必要があります。
IBSかもしれないと診断された場合も、まずは診断基準を満たすかどうかは自分で判断することができます。
特に排便にて症状が全く改善しない、お腹の痛み(不快感は2004年のRome 3基準には含まれていましたが、2014年のRome4基準からは外されました)と便の性状が一致しない、血液が混じるなどの症状がある場合は一度一般内科での検査も考慮をお願いします。
どういった検査が必要になるかについては日本消化器病学会の過敏性腸症候群(IBS)患者ガイドに図表(Q3)として掲載されておりますのでご興味のある方はぜひ参考にしてください。
素材
写真 写真AC クリエイター:涼風さん
過敏性腸症候群すっきりプロジェクト
過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト
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