ガイドラインでの漢方薬の位置づけは第二段階
漢方薬は日本では保険承認されており、病院で処方してもらうことも可能です。
漢方薬はいわゆる西洋薬にくらべて副作用が少ないなどのイメージを持たれている方も居ますが、間質性肺炎など重篤な副作用を起こす可能性もあります。
また、ゆっくり効果を発揮する薬だけでなく、即効性(10分程度)のある薬も少なくありません。
ただ、漢方薬は本当に薬の効果があるのかどうかを検証するための臨床試験が難しく、いわゆるエビデンスとして報告することが難しいとされています。
その一つの理由として漢方薬はその独特の味や匂いにも効能があるとされ、それだけに偽薬(プラセボ薬)を作ることが難しいという理由もあります。
もちろん最近ではいくつかの漢方薬に対する臨床研究が行われ、エビデンスとして報告されてきていますが、過敏性腸症候群(IBS)で良く使用される漢方についての臨床試験はあまり多くありません。
芍薬甘草湯を用いて行われた大規模な国内臨床試験でも、全般改善度は偽薬との比較で差がないという結論でしたが、その偽薬の作成にも規定量以下の芍薬甘草湯を用いて味と臭いを似せているという偽薬作りの困難さが挙げられています[1]。
こういった様々な背景もあり、過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドラインでは消化管を主体とした薬物療法に効果を発揮しない方に対する治療としての位置づけがなされています。
漢方薬は慢性疾患と付き合いやすい?
これはあくまでエビデンスがある話ではないので一例として
過敏性腸症候群(IBS)のガイドラインで実は非常に効果があり、重要とされているものに患者医師関係の確立があります[2]。
患者医師関係の確立についてはエビデンスレベルおよび推奨度ともに重視されています。
(実は心理療法や漢方薬よりも高い推奨度です。)
ちなみに漢方の外来をされてる先生に漢方薬の魅力をお聞きしたところ、この患者医師関係の確立がしやすいところを挙げられていました。
漢方薬は種類も豊富で組み合わせなどができるため、第一段階の治療のように「過敏性腸症候群の治療薬をすべて試したが効果がない」=「もう治療がない」ということになりにくく、また別の薬を試しつつもゆっくり関係をつくっていくことができるということでした。
もちろん、これは全ての症例に適応されるものではありません。
また、これは漢方薬そのものの効果ではないと言われてしまえばそれまでですが、十分な患者医師関係が確立されておらず、疑心暗鬼な状態では効果がある薬も逆効果になる可能性があります。
このほか、漢方は西洋医学では病気としては扱われていない「冷え」についても扱います。
過敏性腸症候群(IBS)の方は下痢型、便秘型のどちらでも冷えに対する強い不安を持たれている方が一定数いるような印象を受けます。
そういった意味では「冷え」に対応し、患者医師関係を確立しつつ効果を手探りできる漢方薬は消化管を主体とした治療薬の効果がない場合に試してみる価値があるといえるかもしれません。
引用文献
[1]佐々木 大輔他;過敏性腸症候群に対する 桂枝加葛薬湯の臨床効果 多施設共同無作為割付群間比較臨床試験:臨牀と研究 (0021-4965)75巻5号 Page1136-1152(1998.05)
[2]過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドライン2014:https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/ibs.html(2020年3月19日参照)
素材
写真 写真AC クリエイター:シルバーブレットさん
写真 写真AC クリエイター:FineGraphicsさん
過敏性腸症候群すっきりプロジェクト
過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト
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