柔軟性とバランス思考

【コップ半分の水】についてバランス思考で考える

『コップ半分の水を見てどのように感じるか』といった質問をどこかで聞いたことはあるでしょうか?

少し検索してみただけでも、水が「まだ、半分ある」と捉えるか、「もう、半分しかない」と捉えるかという捉え方をポジティブ思考やネガティブ思考と関連して説明するものや、「半分入っている」から「半分空である」ことへ視点を変更する(P.F.ドラッカー)、など様々な解釈がなされており、非常に興味深かったのですが、残念ながらどれが大元なのかを見つけることはできませんでした。

認知行動療法(CBT)での考え方を変える(認知再構成)をプラス思考に考えることだと解釈される方も意外に少なくないので、バランス思考というものに少し触れてみたいと思います。

      

例えば先ほどのコップ半分の水の質問に対し、認知行動療法(CBT)では、「どんな状況で?」という質問を加えていきます。

これは状況によって、「まだ、半分ある」という捉え方が適切な場合もあれば、「もう、半分しかない」という捉え方の方が適切な場合もあるという考え方をベースにしています。

例えば次の図のようにコップ半分の水が与えられた状況(背景)と、それに対する反応のバランスが取れているかを考えます。

左側の女性は何時でも水道から十分な飲み水が得られる状況で、コップの水は「半分もある」と答えました。

一方、右側の女性は一面の砂漠ですぐに水が手に入らない状況でコップの水は「半分しかない」と答えました。

コップの中の水の量は変わりませんが、それがどんな状況に置かれているのかによって「半分も」なのか「半分しか」なのか受け止め方が異なっています。

この場合は右の女性も左の女性も状況に応じて適切に判断しているように見受けられます。

       

では、次の図のようにそれぞれの背景が逆転した状況だったらどうでしょうか?

一方は見渡す限り一面の砂漠ですぐに水が手に入りそうもないのに「半分もある」とニコニコしている女性、方やいくらでも水道を捻れば水が出に入る状況で「半分しかない」と嘆く女性。

ここでは、前者がすでに水の確保や砂漠の脱出方法を確保していたり、後者がミネラルウォーターしか飲めないといった裏事情はないという前提で話を進めていきます。  

後者は常にこんな調子で生活していくのは気分的につらそうですが、それ以上に前者には命の危険があるかもしれません。

半分もあると言うのは、非常に前向きでポジティブな印象を受けますが、砂漠でコップ半分の水しか与えられなかったら何とかそれが無くなる前に次の水を手に入れる手段を見つけなければ命の危険がある中で「何とかなるでしょう」とその半分の水もさっさと飲み干してしまったとしたらどうでしょうか?

必要以上に嘆くだけで動かないよりは多少前向きな方が良いのかもしれませんが、やはり状況とそぐわないポジティブさは少し危険もはらんでいるため【⁈】としました。

バランス思考と過敏性腸症候群(IBS)        

この「コップ半分の水」の例えを過敏性腸症候群(IBS)に当てはめると次のような場面が想定されます。

万が一トイレに行きたくなってもすぐに行けるようにトイレ付きの車両に乗っていたが、トイレに人が入ってしまいすぐには使えない状況になった、という場面です。

  

確かに自分も便意があってトイレに入ろうとしたところでたった一つのトイレが埋まってしまったなら不安や絶望に駆られるのは想像に難くありません。   

これは赤枠の例えに近く、状況と感情が一致しています。 

一方、便意すら来ていないのにトイレに人が入ってしまい、すぐに使えないという状況になったとたん不安になってしまうのは緑枠の右側の女性同様、少し過ぎた反応かもしれません。

万が一に備える姿勢は素晴らしいのですが、起きるかどうか分からない事態に対し、常に万全の対応を取ろうとすると疲れてしまいそうです。

とはいえ、過敏性腸症候群(IBS)の方は知覚過敏があり、実際便意を感じやすいので、いざとなったら何とかなるから、と緑枠の左側の女性のようにやみくもにポジティブに振るまうべきだ、というのも現実味がありません。   

   

では、どうしたら状況(トイレの有無とお腹の調子)と考えや感情が赤枠のようにある程度バランスが取れるようになるのか。

頭では分かっていてもその場になると不安でいっぱいになってしまうということもあるかもしれません。


これに関してはあまり近道はないような気がします。

認知行動療法(CBT)においては近道ではないですが、ある程度確立された方法が手案されています。

少しずつ新しい考え方に沿った行動をし、その上で予想した不安な未来がどの程度実際に起こったのか、それとも想像で終わったのかを確認していく認知再構成というスキルになります。

過敏性腸症候群(IBS)に対する認知行動療法(CBT)では名前の通り、頭で考えるだけではなく、行動も通して確認していく作業を通してバランス思考を身に着けていく手伝いをさせていただきます。

  

もし、ご興味がある方は一度京大の臨床試験、IBSスッキリプロジェクトまでお問い合わせください。


素材

写真 写真AC クリエイター:junepさん

イラスト イラストAC クリエイター:麦さんの画像を用いて菊池が編集

写真 写真AC クリエイター: FineGraphicsさん


過敏性腸症候群すっきりプロジェクト

過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト