食べてから排泄に至るまで

消化時間

過敏性腸症候群(IBS)の方の中には「食べるとすぐにお腹を下します」「食べたものがすぐに出てきてしまいます」と訴えられる方が少なからずいらっしゃいます。

一般に

  • 口から入ったものが、食道を通過するには:30-60秒
  • 口から入ったものが胃を通過するには:1-4時間
  • 口から入ったものが小腸を通過するには:2-15時間
  • 口から肛門に到達して便として排泄されるには:24-72時間

の時間が必要になると言われています。

このため「食べたものがすぐに出る」というのはなかなか難しいことが分かると思います。

一方で、「食べた直後」にお腹を下す可能性は確かに否定できません。

食べるという行為はそれ自体が消化活動となる腸管の動き(蠕動:ぜんどう)を促すスイッチとなるからです。

このため、食べたもの自体が出てくるというよりは、前日より前に食べたものの搾りかすが腸の動きによって押し出されるというのが一番近い状態かもしれません。

実際、消化器内科では腸を動かしたくないときには患者さんに絶飲食+安静をお願い(ときに強要)することがあります。

例えば、潰瘍などによる消化管出血は体の表面(皮膚など)の出血であれば抑えることができますが、消化管は外から抑えられないのでかさぶたが自然に張ってくれるまで待つことになります。

勿論点滴などで栄養や水分は補いますが、腸管自体を動かさないためには絶飲食(+安静)が一般には推奨されます。

逆に言えば食事をして動けば便意(それに伴う腹痛)などが出現し、排泄に至ってもごく自然な生理現象と言えます。 

食事とIBSと回避行動

とはいっても、「一度で済めばいいけど食後何度もトイレに繰り返し行く羽目になるのはやはり困る」というように生理現象では片づけにくい症状が出ている方も居るのは事実です。

そのような経験がある方にとって、食べたものもしくは食べるという行為自体が悪かった、と思えば当然「食事」という行為への不安が生じてくるのは自然なことに思えます。

実際、外出前や外出中は食事を控えるというIBSの方は、症状が強い方程多い印象を受けます。

理屈上確かに食べなければ腸が動かなくなるので、食後用事がある場合は食事を減らすもしくは抜くというのは一つの対策です。

ただし、その行動を常に行っていると「食事をとる=トイレに行きたくなる(だろう)」という一種の公式を自分の体に条件付けしてしまうことになり、長期的に見た時に不安が増してしまうというリスクも0ではありません。

また、それに伴って外食に不安を感じる、もしくは外食はできるだけ控えるなどの行動に繋がれば生活の質(QOL)も低下してしまします。

このため、短期的な対策と、長期的な視点での対策を考えつつIBSと上手く付き合う方法を見つけていくことが必要だと感じます。

  

回避行動についてはままた別項目で述べたいと思います。


引用

写真 クリエイター:acworksさん

写真 クリエイター:ずみんさん

過敏性腸症候群すっきりプロジェクト

過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト