過敏性腸症候群と似た症状の病気:事務局便り#4

機能性ディスペプシア

1.機能性ディスペプシアの診断基準

2.誤解されやすい慢性胃炎

*動画とブログの中身は同じです。

本日の内容は、お腹の痛みや張り感などがでる、機能性ディスペプシアという病気についてです。

過敏性腸症候群の症状と間違えられることも多く、また、過敏性腸症候群と同時期に発症することもある病気です。

まずは機能性ディスペプシアについて簡単に説明し、それからその診断方法について説明していきます。

機能性ディスペプシアは、おなかの不快感や痛みなどを引き起こす病気で、Rome(ローマ)基準という診断基準で診断されます。

このRome基準は過敏性腸症候群でも使われていて、実は、機能性の消化管の病気に関する複数の診断基準の総称です。

機能性ディスペプシアを診断するためには、逆流性食道炎や胃潰瘍などの具体的な病気がないことを確認し、Rome基準に合致する必要があります。

つまり、診断方法は第2回で説明した、過敏性腸症候群と同じ、他の病気を除外していく除外診断となります。

機能性ディスペプシアの診断基準は、原因となる明らかな病気が見つからないにも関わらず、6カ月以上前から、食後のもたれ感や、食後すぐにお腹がいっぱいになる、みぞおちの痛み、みぞおちの焼ける感じが直近の3カ月間続いている場合となります。

専門用語ではそれぞれの症状を、食後腹満感、早期腹満感、心窩部痛および、心窩部焼灼感とよびます。

とくに、食後腹満感と早期腹満感が強い場合は、食後愁訴症候群、心窩部痛と心窩部焼灼感が強い場合は、心窩部痛症候群と呼ばれます。

機能性ディスペプシアは、最近まであまり知られていなかった病気です。

以前は、慢性胃炎や萎縮性胃炎、逆流性食道炎などの症状と考えられていました。

しかし、最近の研究では、慢性胃炎や萎縮性胃炎ではお腹の症状が起こりにくいことが分かっています。

ただし、慢性胃炎や萎縮性胃炎の原因となるピロリ菌という細菌が胃にいると、機能性ディスペプシアと似た症状が出ることがあります。

そのため、症状から機能性ディスペプシアが疑われても、ピロリ菌がいる場合は、まずはピロリ菌を除菌する治療が勧められます。

ピロリ菌は慢性胃炎や萎縮性胃炎以外にも、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどのリスクにもなるためです。

ピロリ菌を取り除いて症状が改善したら、ピロリ関連ディスペプシアと診断されます。つまり、治療が診断にもなるわけです。

ピロリ菌がいない場合や、除菌しても状態が変わらない場合に、ローマ基準を満たせば、機能性ディスペプシアと診断されます。

  

次回は、下痢や便秘など、過敏性腸症候群の4つのタイプの特徴について説明したいと思います。


イラスト:イラストAC-カフェラテさんのイラストを使って菊池が作成

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