刺激性の下剤とは
刺激性と称される下剤には日本でよく使用されるアントラキノン系(センノシド、アロエなど)と欧米で良く使用されるジフェニール系(ピコスルファートナトリウム、ビサコジルなど)があります。
漢方薬の下剤として良く使用される大黄もセンノシドが含まれています。
刺激性の下剤は大腸に入ると腸内細菌によって代謝され、活性化します。
腸管には筋層の間に神経叢(しんけいそう)があり、そこを活性化した下剤が刺激することで排便に直結する強い腸管運動(蠕動:ぜんどう)が起こり、排便を促す形となります。
長所
- 排便に直結する強い腸管の動きを起こさせるため、排便誘発力が高い
- 内服から効果発現までは約10時間と早い
- 大腸の便貯留時間を短縮するため、水分が吸収されて固くなるのを防ぐ
- 1回の服用で排便を促す作用がある
こういった長所があることから、綺麗に便を出し切りたい大腸の内視鏡検査の前日などに刺激性下剤が処方されています。
短所
- 強い排便時の腸管運動により腸管が痙攣し、腹痛に繋がる
- 腸管が伸び切った状態となり、薬物を使用しない自然な排便が難しくなる
- 長期の定期的な使用に伴う腸管メラノーシス**の発症
**腸管メラノーシスとは
黒色であることからメラニンと名付けられたが、実際はリポフスチンと呼ばれる物質が大腸の上皮細胞に沈着し、大腸粘膜が黒色に変化する状態を指す。現在、ポリープやガンに繋がるという報告はなされていない。刺激性下剤の使用を中止すれば改善するとされている。
短所にあるように刺激性下剤の使用は腹痛や腹満感に通じることからIBSとの区別が非常に困難です。
また、IBSの方が刺激性下剤を用いた場合症状が悪化するとも言われています。
こういった点も含め、便秘型IBSの方で刺激性下剤を多用されている方にはまず、生活や食事の見直しの他、浸透圧性の下剤や上皮機能変容薬への置換をお勧めしております。
なお、刺激性の下剤を全く用いるべきではないというわけではありません。
長所にあるように使い方を適切にすれば、便秘の切り札として使える良い薬です。
そのためにも、できれば必要時のみ用いる形に持っていけることが望ましいと考えます。
ただし、長期にわたって下剤を使用されていた方が、すべての下剤をいきなり中止すれば難治性の便秘を生じる可能性があります。
このため、薬剤の変更や中止に関しては主治医と相談しつつしていただくのが一番安全だと思います。
また、そうはいっても下剤の使用を控えるのが怖いという場合は、排便に関する認知についても一度見直して行く必要があります。
「毎日排便がなくてはいけない。」「残便感がなくなるまで出し切る必要がある」などの考えに振り回されて必要以上に下剤を使用してしまうと、先ほど述べたようにに便秘の悪循環に陥ります。
また、排便がないことで不安になって便意がなくても浣腸や刺激性の下剤をの頻回に用いるようになれば便秘に拍車をかける可能性もあります。
「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では便秘の定義は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」とされています。
不安を感じるあまり便秘の定義があまりに極端なものになっていて、悪循環を引き起こしている場合には認知再構成という認知行動療法のスキルが役に立つことがあります。
もし、ご興味がありましたらIBSスッキリプロジェクト中央事務局までお問い合わせいただければ幸いです。
素材
写真AC クリエイター:acworksさん
過敏性腸症候群すっきりプロジェクト
過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト
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