腸管ガスに関連した訴えはガスによる腹部膨満感、腸の音、排ガス(おなら)、排ガス(おなら)に伴う臭い、それに関連した対人関係への困難など様々です。
Rome基準に代表される過敏性腸症候群(IBS)の診断基準に腸管ガスの症状を主とするいわゆる「ガス型」という分類は存在していません。
しかしその一方で、IBSと併存していることが少なくないという報告もなされています[1]。
IBSの重症度を診断するスコアであるIBS症状重篤度尺度(Irritable Bowel Syndrome Symptom Severity Scale; IBS-SSS)にも腹部膨満感が含まれていることからもそれは推測されます。
また、腹部膨満感がIBSによる困難感の内でもつよい要素であると回答するひとが6割近く存在するという報告もあります[1]。
消化管のガスの量
健康な成人の空腹時の胃腸にあるガスは全部で100-150mlと言われています。
そのうち胃は50ml程度と1/2~1/3を占め、残りの大部分は大腸に存在しています。
一方で、1日に排泄するガス(おなら)はかなり個人差が大きく、200-2000ml、約14±6回という報告もあります。
もちろん、測定方法などの問題もあると思いますが、個人差が大きいのでなかなか「正常値」を出しにくい分野です。
一般に食べたものが口から肛門に到達するには24-72時間かかると言われていますが、飲み込んだ空気は15-20分程度で肛門に到達するとされています。
つまり、「食べたらすぐにガスが出そうになる」という訴えは気のせいではなく、実際に起こっている事実である可能性は高いと言えます。
知覚過敏とガス症状の悪循環
IBSでガス症状を感じやすい原因としていくつかの仮説が考えられています。
①腸内細菌や食事などの変化に伴う実際のガス産生の増加
②腸管運動の低下に伴う排泄の低下
③腹腔の用量の変化
④腸管の知覚過敏の悪化に伴う感覚過敏
中でも①に関しては低FODMAP食などが有効である人がいることも報告されています。
また、④の知覚過敏に関しては過敏性腸症候群の名前の由来意図もなっている通りで、感覚過敏が症状の原因となっている可能性があります。
個人差が大きいため、本人にとっては苦痛を感じるレベルのガスがあっても、検査では「異常はない」と診断されることもあります。
IBS症状に伴う腹部膨満感の治療
低FODMAP食はガスを発生しやすい糖類の摂取を制限することで、腹部症状を抑制し得ることが知られています。
また、ガス産生には腸内細菌が関与していることから、ビフィズス菌などのプロバイオティクスも一定の効果があるとう報告があります。
このほか、知覚過敏↔不安の悪循環に対し、注意を逸らすトレーニングや、不安を軽減する方法として推奨されているのが抗不安薬であったり、簡易精神療法や心理療法となります。
一つの方法だけでは症状が残る場合、いくつかの治療を組み合わせて治療していくことが望まれます。
引用文献
[1]Iovino P, Bucci C, Tremolaterra E, et al:Bloating and functional gastro-intestinal disorders: where are we and where are we going?World J Gastroenterol 20:14407-14419, 2014
素材
写真 Image by skeeze from Pixabay
過敏性腸症候群すっきりプロジェクト
過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト
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