何かに「注意」を向けることの効果
一つのものに集中していると、他のことが目に入らないとはよく言いますが、実際の生活の中でそのような体験をされたことはないでしょうか?
何か気になることがあって、そちらに注意が向いていると、たとえ目の前で話していても効き損ねたという経験を1度や2度は経験したことはありませんか?
一方で注意が向くことでそれまでは気付かなかったことに気付くこともあります。
例えば、車を買おうと思ってディーラーを巡っている時や、雑誌を読んでいる時は、いいなと思っている車種(や色)がいつもより多く目に飛び込んでくるのではないでしょうか?
多くはその車種(や色)に乗っている人が急に増えたわけではなく、注意が向いたことでそれまでは背景として流れていた車の流れの中で、その車種(や色)だけが目に飛び乗んでくるようになったわけです。
日常の中で簡単に、「注意を向ける」体験をしてみたかったら簡単です。
何色でもいいので好きな色を決めてからその日一日、その色を見つけるつもりで出かけてみてください。
家の屋根や、お店の看板、広告。
できればいつも通り慣れた道の方がより面白いかもしれません。
いつもは気になっていなかった店や、建物などに気付いたら、それが「注意が向いた」状態と向いていないときの違いです。
「紫」などは、あまりないのではないかと思っていたのですが、見事な紫陽花が目に飛び込んできました。
過敏性腸症候群(IBS)と注意
人間の感覚というのはすごいもので、集中することで感覚を研ぎ澄ますことができるとされています。
例えば調香師やソムリエなどといった職業の方は一般人にはなかなか区別のつきにくいわずかな違いを見分け、それを生かして職業とされています。
しかし、皮肉なことに過敏性腸症候群では、この【注意】をお腹に向けることで症状が悪化している可能性があるのではないかと考えられています。
もともと過敏性腸症候群の方は「腸管の知覚過敏」があるので、腸管の感覚が鋭くなり、痛みや違和感、便意、残便感を感じやすくなっていると考えられえています。
加えてその部位へ注意を向けることで、それまでは気にならなかった程度の違和感や痛みも敏感に感じてしまうのではないかと考えられています [1]。
ただでさえ気になっている状態で、腹部症状が起きれば、当然それに伴って起こり得ることを想像してしまうこともあるでしょう。
また、想像したことに対する「不安」や「焦り」といった感情も生じてきます。
このように、【注意】が向くことで感覚が鋭くなり、症状が悪化し、嫌な想像が浮かぶことで不安になるといった流れが過敏性腸症候群(IBS)の悪循環を引き起こしていると考えられています。
人によってこの順番は多少異なる順番で出現することがありますが、過敏性腸症候群でなかなか薬物で効果がない方ではこの悪循環が起きてしまっている可能性があります。
逆に考えればこの【注意】が上手く逸らすことができれば、症状の悪化や不安を少し軽減させることができるかもしれません。
スッキリプロジェクトでは、この注意を向ける行為が自分の症状にどのような影響を与えているのかを整理し、注意トレーニングなどを介して自分でこの注意を向けたり外したりする練習を一緒に行っていきます。
ご興味があるかたは、ぜひ中央事務局までご一報ください。
引用文献
[1] Craske MG, Wolitzky-Taylor KB, Labus J, Wu S, Frese M, Mayer EA, et al. A cognitive-behavioral treatment for irritable bowel syndrome using interoceptive exposure to visceral sensations. Behav Res Ther [Internet]. 2011;49(6–7):413–21. Available from: http://dx.doi.org/10.1016/j.brat.2011.04.001
素材
写真AC クリエイター:マロンマロンさん
写真AC クリエイター:unicさん
2020年3月9日 修正
過敏性腸症候群すっきりプロジェクト
過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト
0コメント