痛み刺激と過敏性腸症候群

腸の粘膜は痛みに鈍い?3つの腹痛

そもそも便が通る腸管の内側、粘膜は痛覚に非常に鈍感で、内視鏡などの検査で粘膜を摘まみとってきても殆ど痛みを感じることはありません。

粘膜を取ってくるので出血などを多少起こすこともあり、時々違和感を訴える方も居ますが激しい痛みになることは稀です。

一方、皮膚で同じことをされたら悲鳴を上げることは間違いないと思います。

  

では、そもそもお腹の痛みはどこからきているのでしょうか?

1.内臓痛:内臓そのものの伸び縮みなどによって生じる

2.体性痛:体の表面への刺激(熱や圧迫、化学物質)により生じる[1]

3.関連痛

この3つの痛みが主な腹痛の原因と考えられています。

過敏性腸症候群(IBS)はそもそも知覚過敏があるので痛みや違和感を感じやすくなっています。

そこに加えて下痢や便秘、ガスの貯留などによる腸管の伸び縮みや痙攣を伴うため、過敏性腸症候群(IBS)では内臓痛はほとんどの症例であるといってよいと思います。

一方で、体性痛は原則ないのが過敏性腸症候群(IBS)ですので、今回は「関連痛」とIBSの関連で考えてみたいと思います。

  

関連痛(かんれんつう)~なぜかき氷で頭痛が起きるのか?~

関連痛について比較的わかりやすい例が「かき氷を食べると頭痛がする」だと思います。

  

かき氷を一度に食べると一部の人でこめかみを中心とした頭痛を起こすことがあります。

このような頭痛の機序はまだ正確には明らかにはなっていませんが、いくつかの仮説があります[2]。

その中でも、神経に間違った情報が伝わるという説が分かりやすいので挙げさせていただきます。

 

かき氷を食べた時、感覚(冷たさ)の伝達路としては

かき氷を一気に食べる ➡ 喉の知覚神経が刺激される ➡ 脳が冷たさを自覚する

というものです。

本来、冷たさ(温冷覚)と痛み(痛覚)を知覚する神経経路は別々のもので、冷たいもの=痛みとはなりません。

しかし、痛覚と温冷覚が喉と頭部では同一の経路を通っており、急な強い刺激の場合は感覚の信号伝達に混乱が生じることがあります。

つまり、強い冷たさの刺激が急に入ったことで、痛みを受けたと脳が誤解して頭痛が生じるというのがこの説です。

このように、本来痛みが起こるであろう部位とは違う体の部位が痛くなることを「関連痛」もしくは「放散痛(ほうさんつう)」と呼びます。

  

過敏性腸症候群(IBS)の痛みの全貌は未だに解明されていませんが、もしかしたらこのような機序も関係しているかもしれないと考えられています。

過敏性腸症候群(IBS)で感じる内臓痛は本来消化活動に伴う生理的なものであり、なくてはならない運動です。

それを痛みや違和感として感じてしまう背景に腸管の消化のための動きを、「痛み」と脳が誤解して起きる関連痛が混じっている可能性があります。

  

認知行動療法ではこの痛みそのものを軽減させるよりも、「痛み」と感じる背景に「不安」や「過度の腹部への注意」がある可能性を考え、これらの不安や過度の注意を和らげることで「痛み」の改善を目指します。

もし、心理療法にご興味を持っていただけるようでしたら、こちらのお問い合わせフォームから質問いただければ幸いです。


修正 2020年3月16日 

引用文献

[1]日本ペインクリニック ホームページ;https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_bunrui.html 2020年3月16日参照

[2]解剖生理が良くわかる プチナース 2011.5. Vol.20 No.6 

素材

写真 写真AC クリエイター:FineGraphicsさん

イラスト イラストAC イラストレーター : コレハルさん

過敏性腸症候群すっきりプロジェクト

過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト