生活の質(QOL)
過敏性腸症候群(IBS)は症状そのものもつらいのですが、それだけでなく生活の質(QOL)を大幅に下げてしまうことも少なからず問題となっています。
過敏性腸症候群(IBS)というと下痢型が主に連想されることが多いのですが、実は便秘型や下痢と便秘の混合型もかなり多いと考えられています。
便秘型の過敏性腸症候群(IBS)については別項でも述べていますが、今回は生活の質(QOL)という点から見てみたいと思います。
下痢型の過敏性腸症候群(IBS)の方にしてみれば、便秘になったほうが出かけるのが楽に違いないと思うかもしれません。
しかし、便秘型のIBSの方に聞いてみるとそんなに簡単な話ではないようです。
便秘型の過敏性腸症候群(IBS)も頻回のトイレに悩む
通常、直腸内に150-250mlの便が溜まると直腸の壁が引き伸ばされ、その刺激が神経から大脳に伝わり便意や脊髄反射による肛門の筋肉(内肛門括約筋)を緩みを引き起こすとされています[1]。
ただし、全ての筋肉が同時に緩むわけではなく、むしろ筋肉を緊張させて失禁を防ぐ機能も同時に働いています。
また、肛門付近の神経は、便の柔らかさやガスと便の区別も識別可能です。
このため、ガスが出そうなときに気張ったら便も一緒に漏れてしまうかもしれないという不安は本来はあまりないはずですが、この訴えは下痢型、便秘型のどちらの過敏性腸症候群(IBS)の方からも一定数きかれます。
過敏性腸症候群(IBS)の背景には知覚過敏があると別の項目で記しました。
この知覚過敏のために、本来は便意を感じない程度の便量でも便意と感じてしまったり、本来は区別できるはずのガスと便の感覚の区別がつかなかったりといったことが起きている可能性があります。
このような知覚過敏によって、便意を感じる頻度が増してしまい、便秘型の過敏性腸症候群(IBS)方でも下痢型に負けず劣らず頻回のトイレに悩まされることがあるようです。
便秘型の過敏性腸症候群(IBS)における不安
次のような不安が代表例として挙げられます。
外出先でトイレに入る羽目になったら1時間ぐらい出てこれないかもしれない。
痛みのあまり失神するかもしれない。
食事をしたらお腹が痛くなるかもしれない。
いつまで経ってもスッキリできない。
外出すると全くでなくなってしまうからきっと後から苦しむ羽目になる。
このため外出すること自体が不安になって取りやめたり、外出先で食事をするのを避けたりする「回避行動」に繋がり、生活の質(QOL)の低下を招きます。
一見正反対の下痢と便秘ですが、不安⇒回避行動⇒生活の質(QOL)の低下という流れは非常によく似ています。
逆に言えば、下痢型でも便秘型でも同じような治療を行うことができるのが心理療法であり、認知行動療法となります。
もちろん、便秘型の過敏性腸症候群(IBS)も治療の基本は食事や睡眠といった生活習慣の改善や食生活が優先となります。
ただ、それらの治療を行っても不安が先立ってしまう場合、注意が向き過ぎてしまう場合などは心理療法がお役に立てるかもしれません。
もし、IBSに対する心理療法に少しでもご興味があれば事務局までお問い合わせいただければ幸いです。
修正 2020年4月1日
資料
[1] 高齢者の排便姿勢, 郷原 将大; MEDICAL REHABILITATION (1346-0773)233号 Page63-69(2019.03)
素材
写真 写真AC クリエイター:K-factoryさん
過敏性腸症候群すっきりプロジェクト
過敏性腸症候群に対する非薬物治療の臨床試験に関する情報提供のためのサイト
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